被相続人の戸籍全部事項証明書(謄本)はなぜ必要なのか?

相続人の戸籍全部事項証明書

不動産登記手続き、相続税手続き、銀行手続きのいずれにおいても、亡くなられた方(被相続人)の戸籍謄本が必要になります。
そしていずれの場合であっても、被相続人の出生まで遡った戸籍謄本・除籍謄本が必要です。

※ 最近の行政実務(市区町村役場)では、「戸籍謄本」ではなく、「戸籍の全部事項証明書」というのが一般的です。 また、「戸籍抄本」ではなく、「戸籍の個人事項証明書」というのが通常です。
もっとも、銀行業務などでは今でも「戸籍謄(抄)本」と称するのが通例で、我々司法書士も 通常は「戸籍謄(抄)本」と呼んでいます。
以下では「戸籍謄本」と記述します。便宜お読み替え下さい。

なぜ、戸籍謄本・除籍謄本が必要なのでしょうか?

一番目の理由は、被相続人の現在の戸籍謄本が被相続人死亡を証する書面だからです。

そもそも戸籍とは「戸と呼ばれる家族集団単位で国民を登録する目的で作成される公文書」(wikipedia/戸籍より引用) です。
国民登録の公文書(それ自体は通常どこの国家にもあります)で、日本の特殊な歴史的事情から戸を単位としているもの、と考えて差し支えないでしょう。
ちなみに他の国では戸単位ではなく、個人単位の登録制度が多いようです(家単位の国家もあります)。

人が死亡すると、死亡者の死亡地か本籍地、または届け出た人の住所地のいずれかの市区町村役場に死亡届を提出します。 死亡届には死亡診断書を添付します。 これは必ず必要な手続きで、死亡届が出されないと埋火葬許可証が出ず、死者を埋葬ができません。

死亡届が提出されると自動的に、戸籍および住民票に死亡の事実が記載されます。
この、「死亡の事実が記載された戸籍謄本」被相続人死亡の事実を証する公的な書類に当たります。
これを他の書類で代用することは出来ません。ルールです。

この理由だけならば、被相続人の現在戸籍謄本だけで足りるはずです。
しかし、実際には、被相続人の出生まで遡った戸籍謄本・除籍謄本が必要とされています。
なせでしょうか?

それが二番目の理由です。
すなわち、
戸籍謄本・除籍謄本で、法定相続人が誰かを公的に確認する必要があるからです。

実は、「法定相続人が誰であるか」は現在戸籍を見るだけでは分からないのです。
というのは、ご存知のように、戸籍は本籍地の移転などで新たに書き換えられたり、結婚などで新たに作られたりします。
このような書き換えの際に、すでに死亡等の事情で除籍されている人は転記されません。
このことが重大な結果を生みます。

簡単な例で説明しましょう。

昭和50年に静岡県静岡市で結婚した夫婦がいるとします。
子供は二人いますが、一人は平成5年に死亡し、もう一人は平成13年に結婚した、とします。
そしてこの夫婦は、平成20年に千葉県千葉市に引っ越したので、戸籍も静岡市から千葉市に移した、とします。
そして平成25年、夫が死亡しました。

この場合、夫婦の現在の戸籍には、子供は2人とも転記されていないのです。
もちろん、平成20年の本籍移転の際に作られる戸籍は従前の戸籍を丸写しにして作られますが、この時点で、子供は二人とも除籍されています。 死亡、婚姻は除籍の原因(個人単位の除籍)だからです。
そしてさきほど述べた通り、除籍されている人の戸籍は転記されないので、現在の戸籍には夫婦二人のみしか記載されていないのです。
ですから、この戸籍謄本を見ても、配偶者である妻が相続人であることは分かりますが、夫婦に子供がいたのかどうかは分からないわけです。

そこで戸籍を追っていくことになります。
戸籍は追えるのです。

戸籍には、その戸籍がどこから来たものか記載されています。
本戸籍の場合、戸籍の冒頭に「平成20年何月何日に静岡県静岡市○○町○番地○○から転籍届出」と書いてあるので、 静岡県静岡市で前の戸籍を取ります。この戸籍は現在有効な戸籍ではないので、静岡市役所の奥のほうで眠っています。 これを除籍謄本(戸単位の除籍)と呼びます。
ちなみに除籍謄本の保存期間は平成22年までは80年間、現在は150年間と法定されているので、この除籍謄本は当然入手できます。

※ 除籍は読んで字の如く「籍を除く」という意味ですが、これには個人単位の除籍と、戸単位の除籍の二種類があります。
上の例では、子供二人の除籍は個人の除籍で、静岡の除籍は戸単位の除籍です。

この除籍謄本で、初めて子供二人の存在が公的に証明されることになります。
そして子供の一方が、未婚でどうやら子供を作らないまま死亡したらしい、とも分かりました。 (未婚なのは戸籍で判明します。仮に死亡したのが女の子である場合、未婚のまま子供を産んでいれば、産まれた子はこの戸籍に記載されます。 死亡したのが男の子の場合、少なくとも認知した子はいないことが分かります。相手方からの強制認知という手はありますが、死亡が平成5年 ですからその心配もないでしょう)

しかし、この静岡市から入手した除籍謄本では、「昭和50年」までの関係しか分からないわけです。 それ以前はどうなのでしょうか?
結婚は? 他に子供は?
この戸籍だけでは、そこはやはり分かりません。
そこで同じ手順を繰り返して、どんどん遡っていきます。
婚姻前の戸籍をとり、再婚ではないか、他に子供はいないか、調べていきます。

本件では妻が生存し実子も生存しているケースですから、子供を生むことが出来る約13歳ぐらいまでの戸籍・除籍謄本が必要になります。
兄弟姉妹が相続人になるケースだと、産まれた時までだけでは足りず、他に兄弟姉妹がいないか、両親の戸籍を同じ手順で辿っていく必要 があるわけです。

この二つの理由から、被相続人に関しては一般に「出生まで遡った戸籍・除籍謄本が必要」になるのです。
すでにお分かりの通り、「出生まで遡った」との言い回しは厳密ではないですね……。
ただ、我々士業でも、銀行業務などでも、慣用句的にそのように言っています。

戸籍の改製

上の例では戸籍の改製原因を、結婚と転籍に限っていますが、実際には別の原因があります。 その原因とは、戸籍の様式の変更です。
簡単にいえば、戸籍法の改正です。

この改正は何度も行われおり、その度に戸籍は書き換えられてきています。

明治5年式戸籍
明治19年式戸籍
明治31年式戸籍
大正4年式戸籍(以上を旧法戸籍)
現行戸籍(昭和22年改正戸籍法に基づく戸籍)
コンピュータ化戸籍(平成6年戸籍法一部改正)

現在、閲覧できるのは明治19年式戸籍までです。
このようなことから、婚姻や転籍も合わせて、通常でも4〜5通ほど取る必要があるわけです。 兄弟姉妹の相続なら、8〜10通ほど必要になるのも別段珍しいことではありません。

ちなみに上の例では、最初に出てくる現在戸籍はコンピュータ化された戸籍ですから、 平成6年頃に切り替えられたコンピュータ化以前の現行戸籍を取り、そこから静岡へ……
という長い道のりを辿っていくことになります。

また、それぞれ戸籍は改製ごとに様式が異なりますから、戸籍の読み方も違ってきます。
それに、コンピュータ化以前の戸籍は当然手書きですから、読むのも困難です。

このように、被相続人の戸籍の収集はかなり難しい作業です。
このため、司法書士・税理士は、依頼者に代わって戸籍の収集を行っています。
もちろん、当事務所でも承ります(報酬額は実費別で2万円〜です)。

相続人の戸籍抄本

これに対して、相続人は戸籍抄本で足ります

まず、謄本と抄本の違いですが、
原本 = オリジナルの文書
謄本 = オリジナルの文書を全部写した文書
抄本 = オリジナルの文書を一部写した文書

これらは慣用的な法律用語となっています。

行政上では「戸籍の全部事項証明書」となっているにもかかわらず、実務家が 「戸籍謄本」と呼ぶのは、正直長すぎて面倒臭いし個人事項証明書と聞き分けづらいから という理由もあるにはあるのですが、それ以上に「謄本」という言葉自体が慣用的な法律用語になっているからです。

相続人に関しては、戸籍抄本=戸籍の個人事項証明書で足ります。 ただし、相続発生後(被相続人死亡後)の戸籍抄本でなければなりません。

これは相続人の戸籍収集と同じ理由です。
すなわち、
第1に相続発生時に相続人が生存していることを証明するため。
第2に、その者が被相続人の相続人であることを証明するため。

この二つの理由です。

第一の理由のために、相続発生後の戸籍抄本であることが必要です。
第二の理由のためには、本来であれば、被相続人の戸籍謄本から読み取れる相続人と、その相続人の現在戸籍抄本との間を結ぶ 戸籍謄本が必要(間に転籍や結婚が複数回ある場合)ですが、本人の氏名・生年月日・父母の氏名・続柄などの記載 から、被相続人の戸籍謄本上の者との同一性は認められるので、それは必要ない、という扱いになっているのです。

この戸籍抄本(およびその方の印鑑証明書)に関しては、ご本人にお取り頂いています。
印鑑証明書は住民登録地で取れますが、戸籍に関しては本籍地でしか取れません。
どこの市区町村役場でも、郵送申請で取り寄せることが出来ます。

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